皆さんは日本の最低賃金についてどこまでご存知ですか?
また世界と比較してどのぐらいの順位にだと思いますか?
実は日本の最低賃金は世界で11位、TOP10にも入っていません。
もちろんランキング上位だから豊かとかそういう話ではないですが、一向に私達の生活水準が良くならないのには様々な理由があります。
むしろ日本以外の国が経済的に成長し、それと同時に最低賃金も上がったという方が正しい言い方です。
そこで今回は海外に住んでた経験を元に、世界で起きてる賃金の変化、そして日本の何が問題なのかを解説したいと思います。
【国別】最低賃金&平均年収ランキング
上記のグラフは2018年度の世界の最低賃金をアメリカドル換算で表記したものです。
もう少し分かりやすくする為に、2020年10月現在のレート$1=105円でまとめてみました。
- オーストラリア / 1,270円
- ルクセンブルク / 1,240円
- フランス / 1,207円
- ドイツ / 1,145円
- ベルギー / 1,092円
- オランダ / 1,092円
- ニュージーランド / 1,060円
- イギリス / 1,008円
- アイルランド / 1,008円
- カナダ / 998円
- 日本 / 850円
- 韓国 / 830円
- スロベニア / 767円
- アメリカ / 767円
- スペイン / 725円
- イスラエル / 715円
為替によって金額が多少変動しますが、平均値として計算した場合、決して的外れな数字ではないと思います。
また毎年のように最低賃金が上昇している国もあるので、あくまで参考程度に理解するようにしてください。
ではこのグラフを見て、率直な感想はどうですか?
おそらく多くの方は、日本の最低賃金が低いことに衝撃を受けると思います。
では年収で見た場合、日本はどのぐらいの位置にいるのでしょうか?
【国別】世界の平均年収ランキング
こちらも上記のグラフを参考にしつつ、先ほどの為替レート(2020年10月現在$1=105円)で計算してみました。
また表記されている数字は、After TAX=税を引かれた金額(手取り)になります。
国 | 平均年収 | 月収 | |
---|---|---|---|
1位 | スイス | 768万円 | 64万円 |
2位 | デンマーク | 456万円 | 38万円 |
3位 | シンガポール | 444万円 | 37万円 |
4位 | アメリカ | 444万円 | 37万円 |
5位 | オーストラリア | 432万円 | 36万円 |
6位 | カタール | 420万円 | 35万円 |
7位 | ノルウェー | 396万円 | 33万円 |
8位 | 香港 | 372万円 | 31万円 |
9位 | アイスランド | 360万円 | 30万円 |
10位 | オランダ | 360万円 | 30万円 |
15位 | 日本 | 336万円 | 28万円 |
こうして月収や年収で見ると、日本が世界と比べて特別悪い訳ではありません。
ただ日本の雇用環境は正社員が優遇されているからであって、非正規をあえて選ぶ外国人が多い海外と日本を比べるのは難しいでしょう。
しかしここ最近の日本の労働環境も、正社員を追い抜く形で非正規労働者が急増しています。
日本国内の正社員と非正規労働者の実態

正社員と非正規労働者の割合に関しては、2019年に行った労働力調査でしっかりと明記されています。
今の労働環境は10~20年前の日本とは全く違うので、ぜひ現状を把握する為にも参考にして頂けたらと思います。
2019年平均の正規の職員・従業員数は3494万人と18万人の増加となった。一方,非正規の職員・従業員数は2165万人と45万人の増加となった。
男女別にみると,男性は正規の職員・従業員数が2334万人と5万人の減少,非正規の職員・従業員数が691万人と22万人の増加となった。
女性は正規の職員・従業員数が1160万人と23万人の増加,非正規の職員・従業員数が1475万人と24万人の増加となった。
まずここで注目してほしいことを下記にまとめました。
- 2019年の日本の雇用者数は5,660万人
- 正社員=3,494万人
- 非正規=2,165万人
日本は正社員が圧倒的に多いと思いきや、実はもう既に三分の一が非正規として働いています。
特に注目してほしいポイントが、非正規の大多数をパート・アルバイトが占めており、30~60代の労働者が非常に多いことが分かります。
この事実を知って僕はかなりの衝撃を受けました。
ではなぜここまで非正規労働者が増えているのでしょうか?
実はその大多数が65歳以上の非正規労働者で、年齢階級別に見ると77.3%、しかも毎年確実に上昇しています。
これと比例して少子高齢化による高齢者の数も増加傾向にあり、一番はこの影響が大きいのではないかと思います。
また労働者自身の仕事に求める価値が変わってきているのも要因の一つです。
男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」という理由で非正規を選ぶ傾向にあり、仕事に対する意識が変わってきたことと、仕事以外の部分に価値を感じるようになってきたことを表しています。
ただし、非正規に関しては収入が極端に低いのも事実です。
男性の正規の職員・従業員は以下の通りです。
- 500~699万円が23.3%
- 300~399万円が19.8%
- 年収300万円以上の労働者が43.1%
それに対して、非正規の職員・従業員は以下の通りです。
- 100万円未満が28.9%
- 100~199万円が27.8%
- 年収200万円以下の労働者が56.7%
女性の正規の職員・従業員は以下の通りです。
- 200~299万円が27.6%
- 300~399万円が24.7%
- 年収200万円以上の労働者が52.3%
それに対して、女性の非正規の職員・従業員は以下の通りです。
- 100万円未満が44.0%
- 100~199万円が38.6%
- 年収200万円以下の労働者が82.6%
やはり非正規労働者で安定した収入を得ている人はごく少数で、ほとんどの方が生活に余裕がない、または貧困ラインを下回る状況で生活を余儀なくされています。
貧困率とは、収入から税金や社会保険料などを引いた「可処分所得」が全国民の中央値の半分に満たない人の割合のこと。日本においては、245万円(2015年)の半分、つまり可処分所得が年間122万円未満しかない人は「相対的貧困」となる。

日本の労働環境は他国と比べて非常に恵まれています。しかしその分格差が広がっていて、いわゆる貧困層と言われる方達がたくさん誕生しているのも事実です。
もちろん全ての国民を平等に助ける手段は無いと思います。
しかし時代と共に多様な働き方が推進される現代だからこそ、低所得者層を少しでも助ける為に最低賃金を上げることは急務なのではないでしょうか。
都心部と地方間の賃金格差

都道府県 | 最低賃金 | |
---|---|---|
1位 | 東京 | 1,013円 |
2位 | 神奈川 | 1,012円 |
3位 | 大阪 | 964円 |
4位 | 埼玉 | 928円 |
5位 | 愛知 | 927円 |
6位 | 京都 | 909円 |
7位 | 兵庫 | 900円 |
8位 | 静岡 | 885円 |
9位 | 三重 | 874円 |
10位 | 広島 | 871円 |
最下位 | 多数 | 792円 |
令和2年度 地域別最低賃金 答申状況のデータを参考にさせて頂きました。
この表から分かることは、東京または東京周辺の地域ほど最低賃金が高く、東北や四国・九州など一部の地域を除き、都心部と比べて時給が200円以上も離れていることです。
時給200円と聞くと大したことないと思われがちですが、一日8時間労働を20日続ければ月32,000円、年間384,000円の差が生まれます。
地域によって年収が約40万円も違えば若者達が田舎から離れ、都心部に集中してしまい、地方の過疎化が一気に進むことに。
また地方に拠点を置く企業も労働者不足で事業の縮小・廃業なども免れない状況になるでしょう。
もちろん都心部と地方では賃料も物価も違うので、必然的に最低賃金を高くしなければならないのは理解できます。
しかしこの賃金の差を狭めていかない限り、地域による格差の問題が深刻化、更に労働者が田舎を離れてしまえば地方の経済自体が厳しい状況に立たされると思います。
オーストラリアで働いた時の体験談
では僕の実体験を元に、オーストラリアの労働環境、そしてお給料事情を日本と比べてみましょう。
どちらも2020年10月に公表されているデータから計算しました。
日本(東京)
- 最低時給 / 1,013円
- 平均年収 / 615万円
オーストラリア
- 最低時給 / 1,507円
- 平均年収 / 625万円
1AUS$=76円で計算
こうやって比較してみると、最低賃金は500円近くの差があり、年収に関してはそこまで大きな差が開いている訳ではないですよね。
しかし日本の場合は、このデータの大半が正規の社員・従業員から収集したものであり、オーストラリアは正社員・非正規共に年収に大きな差はありません。
オーストラリアの場合は大きく分けると、Full Time WorkerまたはPart Time Workerで選択できるようになっていて、いわゆる正社員とパート社員(アルバイト)の違いです。
雇用を結ぶ際に人事の人と綿密に交渉して、給料・労働時間・仕事内容をお互いの希望に合わせて話し合います。
ここまでは日本も一緒ですが、オーストラリアは雇用主に対して厳しく取り締まっているので、短期労働者であろうとアルバイトであろうと、最低賃金は必ず守らなければなりません。
なのでどんな労働者でも下記の給料をもらうことができます。
- 最低時給 / 1,507円
- 最低月収 / 約24万円
- 最低年収 / 約290万円
また交渉次第では最低賃金以上の給料がもらえる場合もあり、実際に僕自身は時給$25(当時の為替レート/時給2,250円)で働いていました。
もちろんその分、有給がもらえないとか病気の給料保証などの福利厚生は無いとは言え、外国人の短期労働者でも会社側はしっかりと給料を保証してくれるのです。
しかも月によっては、正社員よりも高い給料をもらえることもありました。
つまりオーストラリアの場合、雇用契約が違くても、労働者の希望に合わせて条件を決める形になっていて、更に正社員と非正規でも収入に大きな差が出ないような仕組みになっているということです。
また日本と同様住む地域によって賃料や物価も違うので、都心部に住むほど給料が高く、地方は給料が低くなる傾向にあります。
ただオーストラリアにも外国人を最低賃金以下で雇っているブラック企業もたくさんありますが、法律で労働者を守る制度が整っているので、そういう企業と契約を結ばなければいいだけの話。
後は現地の人の働き方や、労働に対する価値観も日本人とは全く違うので、労働と収入の対価・ストレスの有無で考えると、オーストラリアの方が幸福度が高いと思います。
詳しい内容は別記事でまとめてあるので、よかったら下記のリンクを読んでみてください。
まとめ
普段日本国内で働いていて、最低賃金や年収に関してそこまで気にすることはないですよね。
しかし世界と比べてみると全く違う視点、そして様々な事実があることに衝撃を受ける人もいると思います。
僕自身は海外に数年住んだ経験があるからこそ、初めて日本の問題、そして良い部分も客観的に見ることができるようになりました。
ここ最近の日本も時代と共に多様性を受け入れ、様々な制度を改革する流れが起きていますが、欧米と比べるとまだまだ整っているとは言えません。
ただこのままの制度を維持していても何も変わらないばかりか、日本人同士で自分達の首を絞める形になるので、生活に直結する賃金格差は真剣に考えなければいけないと思います。
政府が決めるのを待つのではなく、労働者一人一人が声を上げ、未来の日本の為に最低賃金のアップや労働環境の改革を進めていきましょう。
今後の日本を良くするのも悪くするのも、全て自分達次第です。その為にも個人の意識改革から始める必要があると思います。
読んで頂きありがとうございました。
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